Pan AmのA320 Reduced Trainingを修了された方から訓練内容の掲載許可を頂いたのでご紹介します。
FAA ATP取得を悩んでいる日本人パイロットの皆さんへ
日本の航空業界は大きく変化しました。特に大きく変化したのがパイロットの移籍だと思います。退職まで身を尽くしてという概念はもはやありません。国内のエアライン間を移籍することは日常的に行われています。これらのことは、私が申すまでもなく皆さんが実感されていることと思います。ここでは実際の経験と情報を提供し、これらが皆さんの将来に有益なものとなることと信じています。
このブログにたどり着いた方々は海外へのエアラインへの飛躍を切望しつつも、情報量の不足によりその一歩を踏み出しかねていることと思います。
現在の確約された地位と収入を捨て海外のエアラインに挑戦することは、当然のことながらリスクを伴います。世界情勢も影響するでしょうし、安定した職場環境維持は保障されません。すべては自己責任の基において覚悟と準備が必要です。
その準備と覚悟を成した方は、迷うことなくFAA ATP取得に向け手続きを始めてください。覚悟をもって決断したら、即行動です。Pan Amのホームページからコンタクトしてください。英語に少し不安があったとしても日本人スタッフがサポートしてくれます。その後のメールでのやり取りについても日本語のメールが可能となります。ほぼすべての手続きはPan Amからのメールに沿って準備を進めていくことになり、問題は解決されます。
基本的な流れはこのブログあるType Rating取得ガイドに沿って準備を進めることになります。唯一、補足する必要があるのがLicense Verificationです。これは、FAA ATPを取得するにあたって現在保有するJCAB CPL, IFR Rating, Type Rating, English Proficiency, Medical CertificationをJCABがFAAに対してライセンス等の有効性を保証することです。FAAのホームページよりApplication Formを取得し、すべてのJCABライセンスをスキャンしてメールに添付して送信すれば最短6日でVerification Letterが届きます。
Pan Amでは現在、割引価格にてATP取得をサポートしています(Reduced ATP Training B737/A320保持者に限定されます)。他の会社でも同程度の価格設定があるかもしれませんが日本語サポート、日本人受訓者の引継書、Oral過去問、Sim Check Rideのヒントなど充実している訓練施設は他にはないでしょう。
日程について、ATP-CTP ProgramとATP Trainingは必ずしも一連続で行う必要はりません。ATP-CTP ProgramはあくまでもATPを取得するために要求されている訓練です。この訓練終了後学科試験の有効期限5年以内にATPを取得すればよいのです。日程確保に厳しい方は2回に分けて取得をすることも可能です。
参考までにATP取得に際して必要な経費を紹介します(訓練費と宿泊費は概算。為替レートにより変化します)
- 訓練費 ¥1,220,000 ATP-CTP ProgramおよびReduced Training ATP(振り込み費用込み)
- 宿泊費 ¥190,000(約20日間、朝食付き)
- TSA指紋採取 ¥15,400
- ESTA ¥14,300
これに渡航費、生活費、食費が加わります。
私はPan Am社員でもなければ、リベートを受け取っているわけでもありません。
皆さんの挑戦をPan Am社員が応援してくれます。
ATP-CTPおよびReduced ATPコースについて
渡米について
成田からヒューストン(ANA)経由マイアミ国際空港(ユナイテッド)にて予定を組みました。
当日、成田からの出発が4時間遅延したためヒューストンからの国内線に搭乗できなくなり、ヒューストン国際空港内のマリオットホテルに宿泊。翌日の早朝便にてマイアミに到着しました。
予期できない事象も考慮してある程度余裕を持った計画が必要です。また、ジェットラグもありますので少なくともコース開始1日前には現着して、ホテルの環境や訓練施設までのアクセスやレストランの情報も入手していたほうがよいでしょう。
入国審査について
Pan Amでは日本人にビザを要求していません。2週間ほどの訓練ですのでESTAでの入国になります。実際の入国審査では渡米の目的を「パイロット訓練でATPを取得するために来た。Pan Amで訓練を受けます」としっかりと伝えました。フィンガープリントを登録する際にPan Amからの訓練許可を含めた証明書を携行することになりますので、疑われたとしてもその証明書を見せることで対応できます。
それらの証明書は見せることなく入国できました。
マイアミ国際空港からホテルまで
マイアミ国際空港に到着後、バゲージは1階で受け取ります。ホテルまでのシャトルバスに乗るには2階に上がり待つことになります。バス停などありませんから宿泊するホテルのステッカーのあるバスを見つけたら、手を挙げて止める必要があります。最悪の場合は1時間ほど待つこともあるかもしれません。また、ドライバーのドリンクホルダー横にはこれ見よがしにチップの入ったプラスチックのカップが置いてあります。払わざるを得ません。
滞在ホテルについて
Comfort Suitesと訓練施設のアクセスには途中で大きな道路を横断することになります。時間帯にもよりますが、歩行者ボタンを押しても数分間待たされることもあります。これを考慮に入れても7分あれば到着します。
ホテルと訓練施設の間にはコンビニ併設のガソリンスタンドとSubwayがあります。このコンビニでは飲料水(水道水はおいしくない)やコークなどを購入しました。
Ground School中は途中でSubwayに立ち寄り昼食としていました。
また、訓練施設の北側にスポーツバーがあります。いわゆるアメリカンテイストなメニューばかりですが、リブアイステーキはお勧めです。若くてかわいい店員さんの笑顔に癒されます…その分チップを置いてきます。
ATP-CTPコースについて
FAA ATPを取得するためには数年前からATP-CTPコースを修了することが義務付けられました。このコースを修了するとCertificationが与えられ、ATPの学科試験が受験できるようになります。
今回の訓練コースは最大人数のクラスといわれました。総勢で25人ほどです。教室にはあと10人ほどのキャパがあります。生徒は南米、アフリカなど多種多様でした。
Ground Schoolの内容は一般的な航空知識をおさらいしていくことになります。教室のスクリーンにて教材を映して、教官が説明していくことになります。テキストも1冊渡されますが、すでに既知の内容であり興味を呼ぶ内容のものではありません。授業の合間に学科試験のクイズを行い、ちょうどいい目覚ましにはなりました。
目的は学科試験合格ですので、隣の生徒はiPadで学科試験対策アプリのSheppardをしていたりします。教官もそれを黙認しています。
スケジュール
訓練開始:9/17/2017
訓練終了:10/4/2017
Ground School
1日目〜3日目:Ground School 8:30〜17:50(ランチ休憩1時間)
4日目 :Ground School 8:30〜15:30(ランチ休憩1時間)
時間を正確に守るのは日本人くらいです、1日目にして遅刻をしてくる強者もいます。また、休憩も10分といいながら20分くらいになります。教室で電話している受講者など本当に自由です。
SIM
5〜6日目:SIM(受講者が多い場合にはSIMまで数日OFFとなることもあります)
SIM訓練は時間が個別にアサインされます。私の場合はアルゼンチンの2人とアサインされました。
教官の裁量が大きく影響します。引き続くATP取得訓練で使用するKJFK #30からTaxiして離陸、Steep turn, Stall Recovery, Unusual Attitude Recoveryなどの訓練を行います。
1人につき2時間たっぷりありますから、ここでATPに向けた訓練科目をリクエストして実施することも可能です。
使用するKJFKのアプローチチャートについてはPan Amの日本人社員の方から引き継ぎを受けてください。これらのチャート類はATP-CTP受講1日目に入手して準備した方がよいです(日本で準備できればなおさら良いです)。主に使用するチャート類は以下の通りです。
Departure :Kennedy 3 Departure from Runway 4L
Taxi :KF-B-K-Cross Runway 31L-K1
Approach Chart:RNAV Y 22L, ILS 4R
この2日間にわたるSIM訓練を終了すると、ATP-CTPの訓練修了のCertificationが手渡されます。次はいよいよATPの学科試験に進んできます
ATP-CTP学科試験
基本的にSIM6日目の翌日に試験がアサインされています。前日に、登録されているメール宛てに試験日時の確認のためのメールが届きます。万が一、この時点で合格に不安があれば試験日を変更することができます。その際はPan Amに直接スケジュールの変更を届ければよいと思います。しかしながら、ミニマムスケジュールで進んでいきますのでスケジュール変更は避けたいところです。
学科試験は正直なところ反射神経で回答することが求められます。個々に質問を読んで解答することが少なければ少ないほど正解率が上がり、合格率も高くなる傾向にあるように個人的には感じています。
Sheppardという学科試験の対策アプリの使用を強くお勧めします。なぜなら、このアプリは知識や理解を求めるのではなく問題文に対していかに正解を導くかと言う事を主眼に置いています。もちろん解説もついていますが反射的に解答していくノウハウが詰まっています。
ATP学科試験の問題数は全125問、70%が合格ラインです。与えられている時間は4時間です。通常、この数の問題を回答していけばそれなりの時間がかかることが予測できますが、強者は25分で回答し合格しています。このことからもわかるとおり、合格という目標だけを考えれば短期的な記憶だけで合格できるのです。
このアプリの問題点が1つあります。アプリ自体は検索してすぐにインストールできますが、有効なPassを取得するためにアメリカに電話をしてクレジットカードによる決済を行うことでようやく使用することができます。時差や手間を考えると少しめんどくさいなぁというのが率直な感想です。この部分について現在Pan Amの日本人社員の方とPass取得に向けた調整をお願いしているところです。メールで個別にお願いしたら対応していただけるかもしれません。
Dauntless GroundSchoolというアプリもあります。こちらのいいところは解説が充実しているところです。たとえばPerformanceの問題では実際にグラフに線を引き、解答の導き方をVisualにて解説してくれていますが、試験合格という目的だけを考えると遠回りとなります。あくまでもSheppardの補助的なものだと思ってください。
Pan Amでは訓練施設内での受験が可能です。しかしながらその施設は通常Ground Schoolで使用している施設とは別の建物で行われます。ホテルからは歩いて30分かかります。道は一本道ですから迷うことはありませんが、フロリダの太陽の下を試験に向けて歩いていくのは少々しんどいかも知れません。ホテルからバスを予約できるという事でしたが、正直時間に関して信用できないところがあり、徒歩にて向かいました。
会場につくとFAA公認の試験官(Pan Am社員)が学科試験に向けて試験会場とは別室で手続きを個別に行います。受験者が多いとこの時間をじっと待っていなければなりません。必要書類は以下の通りです。
- ATP-CTP Certification
- Passport
- International Driver’s License (英語による住所記載のため用意した方が無難です)
- JCAB License(住所記載)
これらの書類をスキャンして情報登録した後、パスポートにあるサインと同じサインを液晶画面上で行います。これらがすべて完了するといよいよ学科試験のための部屋に向かいます。
学科試験は全てPC上で回答していきます。持ち込みが許されたのは計算版、ペットボトルの水、メガネだけでした。筆記用具、メモ用紙、計算機は備え付けの品を使用することになります。PCでの回答方法や使用方法は丁寧に教えてくれます。すべてを理解したことを画面上でチェックマークを入れ、試験開始です。
画面左上に残りの試験有効時間がカウントダウンされていきます。焦らないでください、4時間もあります。
Sheppardで対策していれば反射的に解答していくことができます。Performanceなどの問題については、備え付けの分厚い資料集から問題文にあるチャートを見つけて解答していくことになります。
最終的にはENDをクリックして、「終了することに同意しますか」に同意すると試験が終了です。瞬間的にスコアが表示されます。また、どの問題を間違えたかをその場で見ることもできます。終了すると情報登録をした部屋に戻り、スコアの掲載された結果用紙を渡され手続き終了です。この結果用紙はATP実地試験に必要なため大事に保管してください。
IACRAについて
FAAにて実地試験を受ける際に、IACRAで個人の情報を登録しておく必要があります。この登録をPan Amで行いますが、注意すべき点がいくつかあります。日本人社員の方から注意すべき項目としてひな形が用意されていますのでそれを参考に最終確認を行って登録してください。
When in Pan Am, do as the Pan Am do
ATPの訓練に入って教官と衝突する方がいるようです。日本式は捨てアメリカ式を取り入れてください。それが合格への近道であり、訓練を楽しみ笑顔で帰国のキーワードです。
戸惑いはたくさんありましたが、受け入れてしまえばいいんすよ。
情報を共有していただきありがとうございます!
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