Type Rating取得ガイド① 書類手続き

Type Rating

訓練所選び

Type Rating(型式限定)を取れる飛行訓練所は世界にたくさんありますが、私はアメリカにあるPan Am International Flight Academy(以下Pan Am)を選びました。決め手となったのは以下の5点です。

  1. ウェブサイトの情報が比較的充実していること
  2. 英語でコミュニケーションが取れること
  3. 問い合わせへの返答が早いこと
  4. サマーキャンペーン中だったこと
  5. ANA資本であること

中でも「5.ANA資本であること」は大きな安心材料になりました。現地にはANAの日本人スタッフが数名常駐しています。私は英語で問い合わせを行いましたが、日本人スタッフが日本語で対応してくれる場合もあるようです。

訓練開始までに要する準備期間

私は余裕を持って3ヶ月の準備期間を設けて訓練に臨みました。

各種手続きに1ヶ月、予習に2ヶ月を見込みました。

手続きには丸々1ヶ月確保することをお勧めします全てメールでのやりとりとなりますが、時差があるため返答は翌日〜3日後になります。土日は基本的にお休みなので連絡は来ません。1週間経っても返答が無い訓練所もあったので、Pan Amは早い方です。

▶準備開始から訓練修了までのタイムライン

  • 2017年6月    :問い合わせ、訓練費振込、書類手続き、ESTA申請、航空券予約
  • 2017年7月    :ホテル予約、予習
  • 2017年8月    :保険加入、予習
  • 2017年8月24日 :渡米
  • 2017年8月28日 :訓練開始
  • 2017年9月21日 :訓練終了
  • 2017年9月22日 :帰国

最初の一歩、「問い合わせ」

Type Ratingが欲しい!けれど、訓練所のウェブサイトを読んでもイマイチよく分からない。おそらく皆さんこんな状態になると思います。それは当然です。なぜなら、

世界中どこの訓練所も圧倒的に掲載情報が足りません。

どこの訓練所のウェブサイトを見ても、制服姿のパイロット、シミュレーター、施設の写真が数枚と訓練費用が載っている程度です。

本当に欲しい情報である、「手続きの手順」、「いつから訓練できるか」、「自分に合ったコースはどれか」などは問い合わせる他ありません。だからこそ、「問い合わせへの返答が早いこと」は非常に重要になります。

私は毎回、質問を5個ぐらい付けてメールを送りました。こうした質問攻めに対して、Pan Amの担当者さんは一つ一つ丁寧に答えてくださり、とても助かりました。

 

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Pan AmのType Rating訓練について

私の持つライセンスはJCABのCPL、Instrument Rating、Land Multi Engine、プロペラ機の飛行時間は256時間、ジェット機の飛行経験は0です。ジェット機のことは何も知らない状態でした。飛行経験のブランクを埋めることと、A320の知識を身につけて若さに代わるアドバンテージを得ることを目的に、Pan Amでは「A320 Initial Type Ratingコース」を選択しました。約20日間でA320のシステム、基本操作、緊急操作を学び、Oral ExamとCheck Rideに合格してInitial Type Ratingコースを修了しました。

「Ground Schoolコース」と「Home Studyコース」

Initial Type RatingコースはまずGround School(座学)でシステム関係を学び、次にSimulatorで基本操作や緊急操作を学びます。

座学はPan Amで授業を受ける「Ground Schoolコース」と、教材をもらい個人で勉強する「Home Studyコース」があります。Home StudyコースはPan Am滞在期間を短くしてお金と時間を節約できるメリットがあります。座学後のSimulatorはどちらも一緒です。

訓練期間

A320 Initial Type Rating, Ground Schoolコースの場合です。

  1. Ground School           :8日
  2. Oral Exam                  :1日 (90分程度)
  3. Fixed Based Simulator:1日
  4. Full Flight Simulator    :8日 (LOFT, Check Ride含む)

訓練中は3日ほど休日があり、合わせておよそ21日です。

訓練費

サマーキャンペーン

A320 Initial Type Rating, Ground Schoolコースの場合はサマーキャンペーンを適用して$12,632でした。好評なようで、2018年1月まで延長しています。(サマーキャンペーン…?)

NPNP制度

No Partner, No Problemの略です。「一人でも構わないよ!」ということです。相方が見つからず訓練開始が遅れたり、割高の訓練費を払ったりすることはありません。NPNPを使える日程がここに一覧表記されています。

 

書類手続き

Pan Amに決めた後の書類手続きを順番に紹介します。基本的にはメールの指示に従って進めれば大丈夫ですが、注意すべきがあるので後述します。

  1. ライセンス類をスキャンしてメールする
  2. Training Agreement(同意書)にサインをしてメールする
  3. クレジットカードまたはWire Transferで支払い
  4. TSA登録、Fingerprint ※一番ややこしい
  5. ESTA申請
  6. 航空券予約
  7. ホテル予約
  8. 旅行保険加入

1. ライセンス類をスキャンしてメールする

  • CPL
  • Instrument Rating
  • Land Multi Engine
  • 航空身体検査証明書(日本のものでOK)
  • パスポート
航空身体検査証明書は日本のもので構いません。Pan AmのFAQページには “Have a FAA medical certificate”と書いてありますが、これは罠です。このFAQページに記載されている内容は”Career Pilot Academy”という別の施設が実施している、PPL課程の情報です。羽田空港のウェブサイトに「成田空港の情報」が混じっているようなものです。大変紛らわしい。担当者にお伝えし、修正予定です。
上記の情報を信じて(騙され)、日本でFAA Medical Certificateを取れる場所を探しました。ウェブ上には「羽田の東京国際診療所で取れる」と複数書いてありますが、これも罠です。東京国際診療所では既にFAA Medical Certificateを持っている人の「更新」のみ出来ます。新百合ヶ丘にある新ゆり内科では新規にも対応してくれました。料金は2万円、現金のみです。
FAQページには”Submit proof of English competency”と書いてありますが、FAA Medical Certificate同様、Type Ratingコースには不要です。TOEICもTOEFLも航空英語能力証明もいりません。

2. Training Agreement(同意書)にサインをしてメールする

Training Agreement(同意書)がpdf形式で送られてきます。

プリントアウト→手書きでサイン→スキャン→返送します。

3. クレジットカードまたはWire Transferで支払い

私はWire Transferにしました。最初はクレジットカードを検討したのですが、クレジットカード番号を記入するページにセキュリティを示すカギマークが見当たらず、万が一に備えてWire Transferに変更しました。デポジットとして総額の30%を支払う必要があります。1回で全部支払うことも可能です。

UFJダイレクトの「オンライン外国送金」を検討する方へ。オンライン外国送金を利用するための口座登録には紙の申込書のやりとりが必要で、これが2週間近くかかりました。口座未登録の方は銀行に設置されている「テレビ窓口」が早くて確実です。なお、万が一レート換算で誤差が生じた場合、払い手負担とするために3000円の追加出費が生じました。

4. TSA登録、Fingerprint

アメリカで飛行訓練を行うには、毎回TSA(Transportation Security Administration) への登録が必要となります。メールの案内に従いながら、パスポート情報や飛行経験などをSTEP1-8まで入力します。

STEP4にはVISA情報を入力する項目があります。日本はVISA Waiver Program(VWP)の加盟国でVISAは不要です。なのでSTEP4はVISAを登録せずに進んでください。VISAの代わりにESTAを使って入国します。

TSAの登録が完了したらPan Amの担当者に連絡します。TSAとPan Amがやりとりを行い、それが完了するとウェブ上でTSAへの支払い手続きに進みます。$130です。

数日後、

「AFSP Training Request #XXXXXX: Documentation Accepted/Fingerprint Instructions

というメールが届きます。”Fingerprint”とは、そのまんま指紋採取です。

まず、指紋採取の資格を持つ人を一覧から確認します。日本には2人います。

日本全国で2人です。

名前と連絡先をメモして、ウェブ上でFingerprint代を支払います。$199です。

支払いを終えたら、指紋採取官に自分で連絡します。

自動で連絡してくれる仕組みはありません。待ってても何も起きません。支払い完了メールにも連絡を促すような文言はありません。「返金不可だからな!」とだけ。ここはかなり不親切に感じました。

日本の指紋採取官は2人とも関東圏在住です。私はAndrew Roomyさんにメールを送り、横浜で指紋採取を行いました。向かったのはカラオケボックス。プライバシーが確保される場所でなければいけないそうです。バッグからプリンターぐらいの大きな指紋採取機を取り出し、指紋を1本ずつ丁寧に採取していきました。FBIに提出する資料のため、不明瞭だと審査に通らないそうです。名前が下線からちょっとはみ出ただけでもう使えませんでした。同じ紙が5枚用意され、それぞれに指紋を写していきます。所要時間は30分程度です。

Fingerprint代として15000円かかりました。ウェブ上ですでに$199支払っていたので、ちょっと疑問に思いました。何も言わずとも領収書をもらったので正式なものだと信じたいですが、もし支払わなくて済んだという方がいればご一報ください。「日本に指紋採取官が自分1人だった頃はもっと高かった」と言っていました。言い値かも…?

10/5追記:もう1人の指紋採取官の情報も頂きましたのでご紹介します。

もう1人の方はMichael Kellyさん。大森駅付近で待ち合わせて、自宅に通され台所で指紋採取。サービス料金で2000円

また、現役パイロットで台北ステイがあればそこでも採取可能です。

こちらの方の方が安いですね!

指紋採取官が資料を提出した数日後に、

「AFSP Training Request #XXXXXX: Fingerprint Receipt」というメールが届きます。

さらに翌日くらいには、

「AFSP Training Request #XXXXXX: Final Approval」というメールが届き、晴れてアメリカでの飛行訓練が認められたことになります。

この段階を経て、Pan Amから学習資料やスケジュール表が届き始めます。

5. ESTA申請

ESTAは2009年以降に渡米したことがある方ならご存知かと思います。Visa Waiver Program対象国の人がアメリカに入国する際に必要となるものです。日本も対象国です。

VISAだと「滞在期間+6ヶ月間」有効なパスポートが必要ですが、ESTAは滞在期間がパスポートの有効期限内ならOKといったメリットがあります。

ESTAの有効期限は2年です。

機内で配布されるBorder Custom Formは、新規ESTAで入国する方は全員記入する必要があります記入が不要となるのは、「現在所持するESTAで過去に渡米したことがあり、同じESTAで入国する人」です。私は客室乗務員の「ESTAを持っているならBorder Custom Formは不要」という誤った案内で列の後ろに並ぶ羽目になりました。ご注意ください。

6.航空券予約

訓練日程がFIXされたら、前後4日程度を予備日に設けて航空券を予約しましょう。時差ボケや不測の事態に対応できます。私はハリケーンIrmaの影響で訓練が5日間延期しましたが、予備日を設けていたおかげで航空券を買い直さずに済みました。

訓練だけではもったいない。せっかくなら観光計画も盛り込みたいところ。マイアミマーリンズにはイチローがいますいました(〜2018年3月)。マイアミビーチはリフレッシュにぴったりです。車があればセブンマイルブリッジやキーウェストへも行けるでしょう。

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7. ホテル予約

寮はありません。訓練生向けの割引料金で泊まれるホテルを紹介してくれます。

私はComfort Suites Miami Airport Northに泊まったのですが、最高でした

他のホテルと比較せずとも、またマイアミへ行くときはここに行くと決めています。

Comfort Suitesの素晴らしさについては別の記事に書こうと思います。

Comfort Suitesにしておけば間違いないです。

2018年、Comfort Suitesは割引対象外になってしまいました。
訓練生向けの割引料金は現地で本人確認が取れるまで適用されません。まずは電話でPan Amの訓練生であることを伝えた上で予約して、クレジットカード情報を登録してもらいましょう。実際に泊まるまで料金は発生しません。キャンセル料もありません。Comfort Suitesの場合、現地に着いたらJamieというマネージャーに会って割引料金を適用してもらいます。彼しか権限を持っていません。

 

 

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8. 旅行保険加入

一般的な旅行保険で大丈夫です。実機を飛ばすわけではないので特に加入は求められていません。私はAIU海外旅行保険に加入しました。幸い、ハリケーンに襲われても出番はありませんでした。

 

次回は持って行ってよかったもの・いらなかったものなど、「荷造り」について書きます。

 

 

コメント

  1. Kouki より:

    こんばんは!以前から気になっていたことを詳細に分かりやすくブログにしていただきありがとうございます。
    投稿者様は自家用という形でタイプレーティングを取られたのでしょうか?自分は一般企業に勤めており、ここからエアラインに入って最高資格でもある定期輸送の資格を取るのは厳しいと感じております。そこでお金を投じてもいいので、趣味という形でB737のタイプレーティングを取るところをゴールにできればと夢見ています。しかし、当方セスナの免許も持っておらず、貯金から始めているところです。前置きが長くなりましたが、もし自家用という形でタイプレーティングを取得するには、どのような資格や条件(飛行時間など)が必要でしょうか?
    20年くらいかけて少しずつ叶えていきたいと思っています。ご教示いただけましたら幸いです。

    • クロト より:

      コメントありがとうございます。ブログから離れており返信が遅くなり申し訳ございません。
      TYPE RATINGに自家用というものは無く、A320、B737といった型式(TYPE)ごとに付与されるものです。
      TYPE RATINGの取得方法ですが、結論から申し上げますと、日本でB737のTYPE RATINGを取得するには実機でのタッチアンドゴー訓練が必須となります。個人にB737を貸し出す訓練所が無いため、航空会社に所属しない限り、日本でB737のTYPE RATING取得は不可能というのが実情です。これはJCAB(日本の航空局)に直接確認した回答となります。
      アメリカのFAA方式であれば、シミュレーターのみでTYPE RATING取得が出来そうな話を聞きました。
      私自身は色々ありまして、日本の航空会社に入社し、TYPE RATINGを取得しました。

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